こんにちは。
横浜市神奈川区げんきフルート教室の岡本元輝です。
先日、とある展示会でお話ししたアーティストの方が、こんなことを言っていました。
「完成したら、衰退する。」
その言葉を聞いた瞬間、ぼくは少し立ち止まりました。
完成したら、衰退する。
なんだか強い言葉ですよね。
でも、なぜかその言葉が、帰り道のあいだずっと頭の中をぐるぐる回っていたんです。
完成しないから、美しいもの
その方が話していたのは、サグラダ・ファミリアのことでした。
イエスの塔が完成したことで話題になっていましたが、その方はこう言ったんです。
「サグラダ・ファミリアは、完成しないからいい。完成したら、あとは衰退していくだけだから。」
もちろん、建築としての完成を否定しているわけではありません。
でもぼくは、その言葉を聞いて、音楽のことを考えずにはいられませんでした。
音楽における「完成」って、なんだろう
音楽には、作曲家がいます。
ゼロから音楽を生み出す人たちです。
でも、作曲家の中には、一度世に出した作品を、あとから改訂する人もいます。
たとえば、ぼくの大好きな曲の一つ、ブラームスの《ピアノ三重奏曲第1番》。
この曲には、1854年版と1889年版があります。
ブラームスが21歳のときに書いた作品を、30年以上の時を経て、より円熟したブラームスが改訂したんです。
もし、最初の版で「これで完成だ」と思っていたら、あの改訂版は生まれなかったのかもしれません。
そう考えると、音楽における完成って、いったい何なんだろうと思うんです。
演奏者としての「完成」
そしてもう一つ、ぼくは自分のことを考えました。
演奏者としての「完成」って、何だろう。
もし、ある日ぼくが「自分はもう完成した」と思ってしまったら。
その瞬間から、ぼくは新しいことを学ばなくなるのかもしれません。
もっと良い音を探さなくなるのかもしれません。
自分の演奏を見つめ直さなくなるのかもしれません。
そう思ったとき、「完成したら、衰退する」という言葉が、胸に深く刺さりました。
未完成のままでいたい
もちろん、年齢を重ねることで、できなくなることもあると思います。
身体の変化もあるでしょう。
若い頃と同じようにはいかないことも、きっとあります。
でも、だからこそ。
「今よりもうまくなりたい。」
「もっと音楽を深く味わいたい。」
そんな気持ちを持ち続けていたいと思うんです。
完成を目指すのではなく、変わり続けることを楽しめる人でいたい。
未完成のままでいることは、少し不安なことかもしれません。
でも、未完成だからこそ、まだ伸びしろがある。
まだ出会っていない音がある。
まだ知らない自分がいる。
そう思うと、未完成であることは、悪いことではないのかもしれません。
むしろ、未完成でいられることが、音楽を続けていく喜びなのかもしれない。
そんなことを、展示会の帰り道にぼんやり考えていました。


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